空にはきれいな雲がたなびいていて、
空気が澄んでいる。
吸い込む空気がかわいていて、
わたしの肺や、皮膚表面からも潤いを持っていってしまう。
夏の間は思い出さなかった過去のつらかったことなんかさかんに思い出され、
こころがかぴかぴにコーティングされていくような感じ。
何かにあっためてもらいたいのに、とらわれて動き出せない。
悲しいなぁ・・・。
そういえば、ミヒャエル・エンデの本「はてしない物語」には、
「悲しみの沼」というのがでてきます。
悲しみにとらわれると、沼に沈んでしまう。
ケアしきれていない悲しみのかけらが
根を広げ、こころがむしばまれていくさまが、
沼に沈んでいく愛馬によって描かれる、悲しいシーン。
金木犀が咲くころから11月にかけて、
この馬(アルタクス、という名前だったと思う)になったような気分になることがあります。
お仕事もありますし沈むわけにもいかないので、もがくのですが、
底なし沼というのはもがくとさらに沈むのです。
なんてうまい描写なんだ。
そしてなんて五行人なんだ、ミヒャエル・エンデ。
「はてしない物語」の中には、このあと語る五行がとても分かりやすいかたちをまとって登場するので、東洋医学的なことを学ぶ人にはお勧めです。
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今日は季節周りの感情のことを、書こうとしていたのでした。
でも、感情だけ切り取って書くより、全部ひっくるめて混沌といくことにします。
2つに分けました。
長いですけれど、ゆっくりお読みください。
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東洋医学的な考え方では、
万物が、自然の5つの基本要素の関わり合いによって成り立っていて、
その拮抗のバランスが崩れると、
「不調」となると考えました。
古代に人たちがチョイスした自然の5つの基本要素=五行は、以下の5つ。
金、水、木、火、土
そしてこの5つの基本要素の性質に、
すべてのモノとコトをあてはめました。
金的なモノコト
水的なモノコト
木的なモノコト
火的なモノコト
土的なモノコト
自然の中のこれら五行が、どんな風に動いているかなと観察して、
イメージを並べてみましょう。
◆金(ごん)的なモノコト
鉱物です。土がきゅーっと結晶していくような、求心のエネルギーです。
集中するのが得意で独り立ちした職人気質。
溶かしたり、鍛えたりすればどのような形にも変容します。
うまくエネルギーが回れば、豊かな発想で美しいものを作り出しそう。
うまく使わないと、固執したり、主に悲しい気分にとらわれて動けなくなったりします。
鉱物的で密度が高いので、沈みます。ずぶずぶずぶ・・・(前述の馬ですね)
人体の金的なシステムは肺と大腸。
つまり外界との境界線であり、気を供給する管理者でもあります。
肺は潤いのある環境を好みます。
乾燥すると咳がでたり、風邪をひきやすくなったりするのは、
肺がもっている、うるおいを全身にいきわたらせるシステムが機能しにくくなるからです。
また、金は刃となって世界を剪定し、勢いを調整したりします。
秋に動きのある要素だといわれています。
質の良い金を結晶させる(?)には、質の良い土(後述しますが、消化吸収機能)が必要です。
◆水的なモノコト
流れます。大海にむかってとうとうと流れます。
大きな志と自信をもってモノコトに進んでいきますが、
まちがってぶちまけると広がります(パニック!)。しっかりした土壁がないと洪水です。
制御できない水のエネルギーを人は心配し、恐怖します。
足が冷えると溢れてきた水を感じるようで、落ち着かなくなりますね。
人体の水的なシステムは「腎」と「膀胱」です。ここでは尿を濾す以上の役割が割り振られています。こんこんと熱い元気の湧き出る源泉です。
イタリアの「ペンタメローネ」(5日物語)の中に、
双子の片割れが城を追われる際、木の根元から湧き出る泉をさして、「これが濁ったら僕の生命が危ないと思ってくれ」と王子に言い残して去るというシーンがあるのですが、
水が湧き出るところは古今東西、生命力の源を象徴してきました。人体の中でもまたしかりなのですね。
海の中でうまれた先祖の記憶がわたしたちには残っているので、
塩分バランスが悪くなると水との関係が悪くなってむくんだり高血圧になったり、
耳の中にはまだ水にゆれながらバランスを保ってきたシステムが残っているため、
崩れるとめまいを起こしたりします。
この夏は暑くて台風も多く、水との関係がすごく難しかった。
予測不能でしたから、ずっと不安でした。
不安なく過ごすには、質の良い土を盛って治水をすること。
なによりも、よい温泉は火山と、ミネラル(金)のおくりもの。
(ああ、温泉につかりたい)
◆木的なモノコト
木が上にぐんぐん伸びていくイメージです。発芽、発達。
上昇の勢いがあり、イケイケです。
しかし、イケイケがうまく生かされないと、がっかりするのか怒りと背中合わせ…
「頭にカーっと血が上る」とか、「怒髪冠を衝く」とか、胃液が食道にあがってくるとか、眼が血走るとか、三白眼になってくることもあります。
人体の中の木的な働きは、「肝のシステム」と「胆のシステム」。
めぐりと動き(筋肉も)を統率する「指揮官」で、
「闘争と逃走」の交感神経と、「休息と消化」の副交感神経の活動も指揮します。
厄介なことにこの指揮官はストレスに弱く、許容範囲を超えると文字通り「殿ご乱心」状態になります。
台風でたくさんの大木が倒れました。高く伸びた木は強い風が苦手です。
ただ、ねこそぎ倒れてしまうのは異常。本当は、豊かな土が根っこをホールドしてくれるはずなのですが。
木のエネルギーが噴き出すのは春です。
ご乱心にならないようにするには、生命力にあふれた水とよい土が欠かせません。
十音のバルコニーには今年はアボカドが太く、短く育っています。
昨年は、葉もしげることなく細く高くぐんぐん伸びて、40センチのところで一気に枯れてしまいました。ひっぱったら、ぽそっと抜けました。根が全然張っていませんでした。
上へ、上へ、というエネルギーが注目されがちですけれど、下と引っ張り合うことは大事です。
(げんきですよ~!一番左のパキラは、100均サイズからここまでなりました。その右が件の力強いアボカド。そして、同じく100均からのがじゅまると、小さな種からのミントです。今にみんな、室内に入って春まで養生です)