映画「4人の王たち 4 Koenige」と、「5日物語 Il racconto dei racconti」を見ました。
クリスマスのよい思い出は?
特にないわ。
というビデオから始まる前者は、
ところどころに挿入される、少女の手にしたデジタルカメラで撮影した動画に写った、
精神科病棟のさまざまな人たち(看護室長や、掃除スタッフや、患者)の一瞬の表情が、
とても多くを語っています。
4人の若いクライアントの自己治癒力を信じる精神科医(クレメンス・シック)の
左右で違うことを語るような表情も印象的で、
わたしには4人の患者である若い人たちの物語よりも、
精神科病棟で働くスタッフたちの動く表情が興味深かった。
信じたらうまくいくのだ、治癒するのだ、という単純なことでは済まない。
医師はクライアントにかなりの自由を与えながら、
「責任は君にあるんだ」と繰り返し言いきかせます。
自暴自棄になったらその責任は自分に跳ね返ってくることを、
患者は受け入れるレッスンをします。
しかし看護室長をはじめとする大人たちスタッフは、
自分たちの精神的な傷をたびたび同僚や患者のせいにし、実は深く依存している。
彼らが自分を守るために思わず吐き出してしまう言葉が患者のかさぶたをはがします。
最終的には、制御ができず暴力をふるった責任をとって、再び閉鎖病棟へ送還されてしまう青年もいて、家で待つ親たちも問題を抱えているし、この映画で心に傷をもつ青年たちの前途は決して祝福されてはいません。
終盤で初めて、医師本人も崩壊しそうになる自分と闘っているのだということが見えてしまいます。
深い悲しみと、怒りと、愛情で混乱する医師を残された3人の患者が見つめるやりきれないような空気の中、轟音のラップが流れて、映画は終わり。
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